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概要

このテーマを選んだ理由: 契約書は保存したはずなのに、監査の依頼を受けてから探し回る。そんな事態を減らすために、日常の登録作業をどこまで増やすか考えます。
この記事で学べること:
- 読み終えると、証憑の保存と、取引から探せる状態の違いが分かる。
- 読み終えると、台帳の項目と事前準備の範囲をどう絞るか判断できる。
前提: 証憑は、契約書など取引を裏付ける資料です。金融庁掲載の「監査基準」は、監査人に十分かつ適切な監査証拠の入手を求めています。ここでは、そのための資料を会社が探しやすくする実務を扱います。
ひとことで言うと: 取引から証憑までたどる道を作り、更新を続けられる範囲で育てていきましょう。
詳細
たとえば、監査で売上の裏付けを頼まれ、保管フォルダを開いたとしましょう。契約書はあるのに、どれが該当するか分からない。そんな場面から考えてみます。
ルールの上では
まず、探しやすさと、監査に必要な証拠がそろうことは分けて考えたいところです。金融庁掲載の「監査基準」は、監査人が確かめる事項に合った証拠を入手し、リスクに対応する手続を原則として試査で行うと定めています。試査とは、対象を抽出して調べる進め方です。
つまり、検索で契約書が出てくれば、それだけで監査の確認が済むわけではありません。会社側では、依頼された取引に対応する資料を取り出せるようにすることと、何を示す資料が必要かを監査人に確かめることを、別の仕事として考えるとよさそうです。
現場ではこうしている
では、実際にはどこから手を付けているのでしょうか。松田光希氏の note「非会計士による初めての監査対応奮闘記」では、上場準備の現場で、案件データから契約書へのリンクがなく探索に苦労した経験が紹介されています。有効な契約を概ね台帳にまとめ、社名で探せるようにし、主要上位取引先の資料は事前に用意したといいます。
ただ、台帳は詳しいほどよいとも限りません。株式会社SRIの「BUNTAN 導入事例|“管理台帳の適正化”で 契約書の「抜け・漏れ」を撲滅|株式会社アルファパーチェス様」では、株式会社アルファパーチェス(以下、アルファパーチェス)が項目を増やしすぎ、入力が滞った経緯を説明しています。一元管理と自動更新の管理を優先し、締結前後の担当を分け、押印申請から未回収の原本を確かめる運用に変えています。
別の進め方もあります。クラウドサインの「年間数千件の書類管理をGoogleスプレッドシートから「クラウドサイン カンリ」へ移行し、契約書管理業務の属人化解消に成功」では、ディーブイエックス株式会社が、担当交代を機に手入力中心の管理を見直しました。直近の契約を選んで移行し、自動更新の契約は都度登録する形にして、自動抽出後も情報が正しいかの確認を残しています。
経験を並べると、整えた対象と残した仕事が見えてきます。
| 誰が | 困っていた条件 | 何を変えたか | 報告された変化 |
|---|---|---|---|
| 松田氏の勤務先 | 案件から契約書へたどれない | 有効契約の台帳化と主要取引先の事前準備 | 売上関連証憑の検索時間が減った |
| 株式会社アルファパーチェス | 多項目の台帳入力が滞る | 項目を絞り、担当を分けて回収を確認 | 契約の所在と有効期限を把握できるようになった |
| ディーブイエックス株式会社 | 進捗を知る担当者への依存 | 移行対象を選び、抽出を自動化 | 手入力から登録内容の確認へ移った |
ここから、共通する工夫と違いを拾ってみましょう。
比べて見えたこと
- 保存場所をまとめるだけでなく、必要な契約を見つける入口を整えています。
- 松田氏は探索を減らすため台帳を作り、アルファパーチェスは入力を続けるため項目を減らしました。出発点が違うんです。
- 自動化した事例でも、対象の選別や登録内容の確認は人の仕事として残っています。
記事の本質はここ
上手いやり方・解釈のコツ
この違いから、編集部では「たどる道と更新の約束」という整理を提案します。資料への行き方と、それを直し続ける担当・タイミングを一緒に決める考え方です。台帳を作るかシステムにするかを決める前に、次の順で確かめてみましょう。
- 探索で止まるなら、売上案件から契約を特定するのに何が足りないかを見る。松田氏の経験を手がかりに、まず探す入口を整えます。
- 入力が滞るなら、使っていない項目と更新担当を見直す。アルファパーチェスのように、項目を絞ることも改善です。
- 入力を自動化するなら、対象外の資料と確認作業を先に決める。ディーブイエックスの経験からは、抽出後の確認まで設計する意味が見えてきます。
大事なのは、全件を細かく結ぶかどうかだけではありません。どの対象を常に探せるようにし、どこを事前準備で補うか。そこまで決めて初めて、日常の負荷と監査時の探索負荷を話し合えそうです。
鵜呑みにしない点
ただし、この整理をそのまま自社の正解にはできません。適用前に、次の限界を押さえておきましょう。
- 松田氏の事例は監査対応、ほかは契約管理の改善です。検索時間と入力負荷は違うため、成果を同じ尺度では比べられません。
- 紹介した導入事例は利用者の説明です。同じ製品を使えば同じ効果が出るという保証ではありません。
- 売上・契約・請求を通じた識別番号、更新工数、事前準備する取引先の具体的な線引きは、今回の資料だけでは分かりませんでした。監査人と正式に合意した提出条件も不明です。
自社に置き換えると
そこで、明日の会議にはシステムの比較表より、直近で探しにくかった依頼を持ち込んでみてはどうでしょうか。提案するチェックリストは次のとおりです。
- 明日から、依頼された取引から契約書まで実際にたどり、止まった場所を記録する。
- 台帳に残す検索項目と、契約変更時に直す担当・タイミングを決める。
- 常時登録する範囲、事前に準備する範囲、依頼後に探す範囲を仮置きし、必要な証拠と提出期限を監査人に確認する。
ケースで考える(編集部の創作)
この節は、上の事例の知恵を使うと仮にどうなるかを示すため、編集部が創作した架空のケースです。実在の会社・人物とは関係ありません。
では、このチェックをA社で試してみましょう。契約書の保存は済んでいますが、売上案件から該当する契約を選べず、経理が営業に聞き直しています。一方で、台帳の入力待ちもたまっています。
A社は「たどる道と更新の約束」を使い、まず案件から契約を特定する項目と保管先を優先します。営業が変更を知らせ、管理担当が台帳を直す流れを決め、使っていない項目の追加は見送ります。
これで問い合わせの往復は減ると見込みます。ただ、仮に探せても必要な変更契約が抜けているなら、検索項目の追加より回収確認を優先する判断に変えます。便利に探せるかと、必要な資料がそろうかを別々に確かめる練習です。
証憑管理の質は、項目の多さより、必要な資料までたどる道を保てるかで考えてみましょう。
まとめ
- 保存と、取引から証憑を探せることは別です。
- 台帳を詳しくする前に、入力を続けられる項目と担当を決めましょう。
- 自動化しても、対象の選別と登録内容の確認は残ります。
- 検索の便利さと、監査に必要な証拠がそろうことを分けて確かめましょう。
出典
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非会計士による初めての監査対応奮闘記(note(ノート)、2024年12月10日)
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BUNTAN 導入事例|“管理台帳の適正化”で 契約書の「抜け・漏れ」を撲滅|株式会社アルファパーチェス様(株式会社SRI(BUNTANリーガル))
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年間数千件の書類管理をGoogleスプレッドシートから「クラウドサイン カンリ」へ移行し、契約書管理業務の属人化解消に成功(弁護士ドットコム株式会社(クラウドサイン)、2026年5月7日)
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監査基準(金融庁(企業会計審議会))