📚 業界ノート

今日の学習テーマ「IPO準備の勤怠管理、PCログの差異を是正につなぐ」

IPO実務 · · 執筆: KID

このコーナーについて

CFO・経営企画デイリーの『実務家の視点』と『IPO実務』は、ニュースではありません。経営・CFO・経営企画・ファイナンス・M&A・IPO など、企業を動かす仕事をしている人のための学習コンテンツです。毎回ひとつの学習テーマを決め、実務家が公開している記事や公的な資料を読み比べて、ルールの上でどう考え、どう工夫しているかを整理します。最後に、明日から自社で確かめることをまとめます(実務家の視点では、編集部が創作した架空のケースで知恵の使い方も練習します)。

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概要

編集部の提案。打刻とPCログの差異を抽出し、本人の説明と実態から労働時間を判断して、必要な勤怠・賃金の修正完了まで確認します。

今日のテーマ:打刻とPCログの差異を、どう是正判断につなぐか。

前提: IPO準備の勤怠管理で、打刻とPCログを照合する企業があります。厚生労働省のガイドラインは、自己申告と客観的な記録に著しい差があれば、実態を調べ、必要な労働時間の補正をするよう求めています。

ひとことで言うと:本人の説明を実態と照らし、勤怠・賃金の修正まで追う。 ログの取得だけでは終わりません。勤務形態に合わせた確認と、未解決の扱いまで設計するのがポイントです。

詳細

集めた知見:差異の先に何をしているか

バクラクのSecureNavi株式会社への導入事例では、フルフレックス制のもと、従業員が日々申請・承認を行い、管理者の月締め作業を軽くしています。残業の見込みと実績を定期的に確認し、経営陣への共有にも使っています。

株式会社ナカヨの導入事例では、プロフレックス株式会社が、打刻とPCの起動・終了記録を照合しています。同社は、基準に当てはまる打刻とPCログの乖離や休日起動に色を付け、管理者が本人へ理由を確認します。週次の確認と、月次の社長報告を組み合わせています。

もうひとつは、厚生労働省の監督指導結果にある匿名の施工管理等の事業場です。勤怠記録とPCログに差があり、実態調査などを指導されました。その後、合理的に説明できない時間を労働時間に算入し、割増賃金をさかのぼって支払っています。

誰の経験か 条件・困りごと 行ったこと 結果・分かったこと
SecureNavi株式会社 フルフレックス制で勤務実態を把握したい 日々の申請・承認と残業レポートを利用 担当者は管理者の締め作業が短くなったと説明
プロフレックス株式会社 隠れた残業を把握したい 差異を抽出して本人確認、週次確認と月次報告 PCの消し忘れや上長承認待ちも多かった
厚生労働省が紹介する匿名事業場 勤怠記録とPCログに差があった 聞き取りなどの調査を求められ、労働時間を再計算 割増賃金を遡及払い

共通するのは、記録を並べた先に確認の仕事があることです。でも、前の二社は日常運用の紹介で、匿名事例は賃金是正まで進んだ監督事例です。締め作業の改善と、未払いの解消は、同じ成果として並べないほうがよさそうです。

制度の基準と、上場準備での説明

厚生労働省のガイドラインでは、労働時間は使用者の指揮命令下にあるかで判断します。始業・終業は、使用者が直接確認する方法や、タイムカードなどの客観的な記録を基礎にする方法を原則としています。PCログだけを唯一の方法にしているわけではありません。

自己申告で把握せざるを得ない場合、記録との著しい差は調査・補正の対象です。本人が休憩や自主学習と説明しても、実際に指示を受けて業務をしていれば労働時間として扱います。理由を書いてもらっただけで確認が終わる、とはしていないんです。

一方、EY Japanの上場実務の解説は、未払給与の発生原因、解消方法、再発防止体制の整備・運用状況を説明する点を挙げています。これは専門家による実務の説明です。労働時間をどう判断するかという公的な基準と分けて読むと、調査から改善まで何を説明するかが見えてきます。

記事の本質はここ

「差異を閉じる三段階」で考える

ここでは編集部の見立てとして、「差異を閉じる三段階」を提案します。差異を抽出し、実態を確かめ、必要な修正の完了を確かめる、という順です。本人への問い合わせを送った時点で終わりにせず、何が決着したのかまで見ます。

最初の段階では、確認する差異と担当者を決めます。プロフレックスの色分けはその入口です。ただ、消し忘れと承認待ちが混じっていた経験からは、差異の件数だけで隠れ残業の量を判断しない、という読み方ができます。

次の段階では、本人の理由と実態を照らします。休憩という回答を受け付けることと、労働時間ではないと判断することは別の仕事です。公的な基準に沿って、実際に指示された業務をしていたかを確かめ、説明が足りなければ確認を続けます。

最後の段階では、必要な勤怠・賃金の修正が終わったかを確認します。匿名の監督事例は、記録の差が支払いの問題につながることを示しています。だからCFOが経営会議へ持ち込むなら、残業の状況に加えて、未解決の差異と是正の進み具合も議題にしてはどうでしょうか。

鵜呑みにしない点

フルフレックスのSecureNaviと、多様な業務を持つプロフレックスでは、勤務の条件が異なります。後者も強制的なPC終了は難しいと説明しており、ログ取得から自動制限へ進める方法が、そのまま合うとは限りません。同社の差異の基準も、働いた時間を無視してよい幅ではありません。

実名の企業経験は二社に限られます。従業員・承認者を含む総工数、未払いの検証額、是正完了までの期間は比較できませんでした。上場審査の現行規則や、履歴を残し始める時期の一律の基準も確認できていません。匿名事例は反例として使えますが、IPO準備企業だったとは示されていません。

自社に置き換えると

明日の打ち合わせには、差異のある記録を持ち寄り、どこで処理が止まっているかを確かめることを提案します。新しい機能を選ぶ前に、担当者が次の問いに答えられるかを見るんです。

  • 本人の理由を誰が確かめ、未回答・説明不足を誰に引き継ぐか。
  • 勤怠を直した場合、賃金への反映まで誰が確認するか。
  • 未解決の記録をいつ見直し、経営に何を報告するか。

これは各社が実施済みの共通手順ではなく、事例と公的な基準から組み立てた議題です。回答欄に「担当者・確認した事実・判断・次の対応」を設ければ、問い合わせ済みと解決済みを分けて話せそうです。

勤怠管理の確かさは、ログの多さより、差異をどう解決したかを説明できるかに表れます。

まとめ

  • 打刻とPCログの差は、実態を調べる入口です。
  • 本人の理由と、労働時間に当たるかの判断を分けます。
  • 締め作業の短縮と、未払賃金の是正は別々に確かめます。
  • 確認担当から修正完了までを、経営が追える形にします。

出典

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